コラム「同じ景色を眺めるようになるところから」

 自己紹介ふうの近況/心境などを自閉的に少し思いつくまま。なんだかまともに人生とか社会とかってことを考えようとすると、うつうつとしてくる毎日です。

 芥川龍之介にしても、太宰治にしても、漠然とした不安とやらを抱えながら、自滅していったけれど、いつも時代もまともに人間の性(さが)に向き合おうとすると、そうならざるをえないなって、ちょっと偉そうに。どうしようもない自分に開き直れず、やましい自分と、やましく見える社会に、ただただ無力を感じているネクラな中年です。弱肉強食の原理が、近代の社会福祉というベールにうっすらと隠されるようになって、夢とか希望をずいぶんと語りやすくなったのだけれど、本当のことをみんなが突き付けられないようにって、そんな風なことのために、僕の仕事はなってしまっているなって、そんな気になってしまって…あちゃ。自意識過剰のドツボにはまりっぱなしの自分にとっては、ひとくら(ひと・くらしサポートネットちば)の活動は、自分を客観的に見ることに役立ってるのかなって思っています。たくさんの人たちが、本当にそれぞれの考え方を反映させた形で福祉的な活動を行っていて、僕自身の器量の小ささを浮き上がらせてくれています。

 

 まったく出会うことのなかった人と人が対峙し、互いに生きていくために刺し違うことを避けて、それから横並びに歩き始めたとき、同じ景色を眺めるようになるところから、愛だの平和だの、人権だの尊厳だのといったことの具体的なことが始まるのかなと思っています。言葉やシステムではなく、互いが生きていくためには刺し違えるわけにはいかないという生物の本能によって、弱肉強食というもう一つの本能によらずに、支え合っていく、助け合っていく。そんなことは果たして可能なのだろうか。でも、そこを飛び越えては、愛も平和も自由も言葉だけのことになってしまうんじゃないかなって。そんなことを思いつつ、社会に合わせたふるまいができなくなった人、社会に合わせずに生きていこうとした結果、極端に自死か他殺かといったところに追い詰められた人(僕も)などと、どうにかこうにか、社会の幾許かのルールの助けも借りながら、木更津での自分の活動とひとくらの活動を交錯させながら今日もまた…。

■執筆者:伊藤英樹(特定非営利活動法人井戸端介護 理事長)

 

1971年横浜市生まれ。共働きで社交的な両親の元、3人兄弟の末っ子として成長。多感な思春期を横浜で生き抜く。社会福祉士。障害者施設、介護施設等の勤務を経て、色惚けしてサービスを断られ続けた父親の介護の必要に迫られ、2002年千葉県木更津市にて「NPO法人井戸端介護」を立ち上げ。高齢者のデイサービスを経営基盤としつつ、制度内サービスを断られた認知症のお年寄りや障がい者、生活困窮者等の支援を行っている。毎年クリスマス時期には全国から木更津に壊れものが集まる『吹く詩の宴』というイベントを開催。ひと・くらしサポートネットちば共同代表のひとり。

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