コラム「司法と福祉の連携」

 私は平成13年に弁護士になりました。私が弁護士になったころは、多重債務(借金)問題が深刻な状況で、手持ち事件の殆どが債務整理に関する事件という時期もありました。ここ数年は多重債務者が減ってきていることもあり、債務整理に関する事件数は落ち着いてきております。

 弁護士になって日が浅い頃は、債務整理に関する事件は自己破産等により借金が整理できれば「事件は解決した」と思い、それで満足しておりました。しかし、よく考えてみると、依頼者が多重債務に陥った原因には様々なものがあり、その原因によってはただ借金を整理すれば「解決」ということにはならないことに気がつきました。
 例えば、失業したことで収入が無くなり、生活費を補うために借金をした場合、借金が整理されて無くなっても生活状況が変わらなければ、相変わらず苦しい生活が続きます。この場合、安定した収入を得る見通しが立たないのであれば生活保護の申請をする等、福祉の援助を受けて生活をする必要があります。生活保護の申請については、役所によっては厳しい対応をして、本来生活保護を受けることが可能であるはずなのに、受けられないといった違法な対応が問題となることがあります。弁護士が生活保護の申請に同行することで、そのような違法な対応を防ぐことが可能です。弁護士が福祉の視点を持って仕事をすると、より良い「解決」につながります。
 もっとも、借金を整理し、生活保護の申請に同行し、無事生活保護を受給することができたとしても、それでも「解決」したとは限りません。依頼者が生活困窮に至った原因が病気で働けなくなったのであれば、生活保護以外に様々な福祉の援助が必要となってきます。
 ここまで来ると弁護士だけでは手に負えません。弁護士は福祉の専門家ではないので、福祉の専門家の助けが必要です。ひと・くらしサポートネットワークちば(ひと・くら)では、私のような弁護士の他に、福祉関係者も含めて様々な分野における専門家が関わっております。
 私がひと・くらに関わるようになって、多くの福祉関係者の方に仕事で助けて貰いました。今後も司法と福祉の連携を大事にしてゆきたいと思います。

■執筆者:澤田仁史(弁護士・澤田綜合法律事務所)


平成13年10月弁護士登録(千葉県弁護士会)
平成21年 澤田綜合法律事務所開設 現在に至る
日本弁護士連合会  消費者問題対策委員会委員(副委員長・平成28年~)
          貧困問題対策本部委員
関東弁護士会連合会 地域司法充実推進委員会委員(委員長・平成16年~)
千葉県弁護士会   社会福祉委員会委員(委員長・平成26年~)
          消費者問題委員会委員
          地域司法充実委員会委員(副委員長・平成25年) など

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